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また雪山で敗退である。悪天候が原因だ。もう10回中6回は失敗している。

いつもお世話になっている登山ガイド氏に、「雪山の成功率って半々がいいとこなんすかね」と聞くと、笠井さんが雨男過ぎるんです、と指摘を受ける。私が不参加の回は、8割方成功しているとの事だ。

空の恵みは平等のはずなのに、このアベレージを叩き出す私。いい来年度を迎えられますように。

夜行バスで未明、大町着。車を鹿島集落へ飛ばすと、ちょうどトレールが朱鷺色のタイミングでピッチ開始できる。

梢からの雨垂れ跡が、アリ地獄なみにでかく成長している。梢の平面への射影だから、きっと黄金比だろう。見ていて美しい。砕きながら沢をつめた。

もうスノーブリッジの崩落が始まっている。残りのやつも、アイゼンに削られまくって、見るからに頼りない。

稜線にとりつくまでに、くるぶし程度の渡渉を3回。今後、1回/日くらいの割で増加するだろう。膝丈~腰の水深も、あと数日で現れそうな3月下旬。綱渡り生活の3月下旬。

白樺茂る急坂。コアラのマーチ状の雪塊を発見。アルプスの英知に、カメラを構える手も震えぎみ。

森永おっとっとのリスペクト。

上記の鯨は「雪庇(せっぴ)」といって、強風、たとえば西高東低のとき吹く西風の力で、稜線上にもりもり成長する。登山者に、稜線の位置を錯覚させ、踏み抜き事故を誘発する。

快晴なのに、空との境には、雪煙がいつも荒れ狂っている。トラップ大増刷出来。

そんな恐怖に抗い往く。もう、下山後の温泉しか考えていない。

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背後に鹿島槍ヶ岳。現物も巨大だが、人間が一緒に写っていると、遠近感が強調され、より Big に。

雪煙は、10階建てのビルくらいまで舞い…

テントがみるみる埋まってしまう。

周囲に防風壁(雪)を築いているため、ちょうど、コップに水を注ぐような状態だ。6人用テントも、夜間、次第に圧縮され、実質4人分のスペースしか残らない。テントの両端に寝た者から順に、犠牲となる。

寝てるだけでも体力を使うから、設営と撤収はいわんやである。山男に科せられる、いつ終わると知れない試練。

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この作業は、まぶたが凍って板になるまで続けられる。眉毛と鼻毛からはツララが生える。

上下のまつげが まばたきの拍子に癒着する事が、もっとも恐ろしい。無理に剥がすと、毛根から抜けてしまう。

下山後、登山姿のままマツキヨの化粧品コーナーでつけまつげ探すのが、また苦痛。結婚式にうっかりジャージで来てしまった時のような罪悪感でいっぱいになる。

やっと設営したテント。狭いながらも、黄金の御殿。

極限状態の山男達は、肉棒をもてあそび暖を取った。(伊藤ハム・アルトバイエルン)

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