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味噌汁色のコロラド川。頭上をよぎる蒼い空。
ロサンゼルス国際空港から、アリゾナ砂漠のドライブ約8時間と、ガラガラヘビが出るトレッキング2日を費やした先にある、「アメリカで最も遠い景勝地」といわれる。
川べりに辿り着いた時の達成感は格別だ。頭の中を、ドラクエVIIの馬車のテーマが流れる。
しかし普通の登山と違い、帰路が下りでなく登り。かつ灼熱の砂漠でガラガラヘビも出るので、帰りは相当げんなりである。
冒険の書が消えたときの音楽が5秒ループで流れる。
コロラド川は濁流だが、その枝沢は、澄んでいることが多い。しかも、河の色が一本一本違っていたりして面白い。
ここ Havasupai (ハバスパイ) トライバルパークの渓谷は、付近の土壌に石灰が豊富に含まれている影響で、碧水をたたえている。透明度は5mほど。砂漠で灼けた眼の、いい清涼剤だ。
もちろん泳げる。
渓谷は、グランドキャニオンの急峻な崖に沿って刻まれているので、滝が多い。水泳の熟練度に応じ、適切な滝壺を選んで泳ごう。
さもないと、このような激しい段差も多いので、割と簡単に溺死して、キャニオンの藻屑になる。
たぶん濁った水のせいで死体は発見されず、泥炭層の下で化石化し、10万年後くらいに、ネバダ州の考古学博物館あたりに展示されることだろう。
溺死したくないけど涼しくなりたい場合、石清水を浴びよう。
苔と泥でぬるぬるしているので、爽快感は滝壺に劣る。むろん、そういう触感のほうがむしろ好き、という変な性癖の人には、こっちの方が気持ちいい。
滝以外の場所は、深いゴルジュになっていることが多い。
水面に顔をつけると分かるが、幅は1mに満たないのに、水深10mにも達している場所があって、すごく気持ち悪い圧迫感に襲われる。
ぼっとん便所やMRIが苦手な方は、中を覗かないほうがいい。
せせらぎの畔で日向ぼっこも気持ちいい。
でも、攻撃されると毒状態になりそうな生物がウヨウヨしており、精神的な安楽は保証されない。
グランドキャニオンに来るなら、どうぐやでどくけしそうを購入してからの方がよさそうだ。
うまい具合にハバスパイにはネイティブ・インディアンの村があり、道具屋、武器屋、宿屋、教会と、ひととおり揃っている。ドラクエの村である。
これならきっと、どくけしそうもすぐ見つかるだろうと思ったら、緊急時はヘリを呼んでラスベガスの総合病院に搬送してもらえるとのこと。
有料ルーラ。
村のはずれの牧場。
喋る馬のエドがいて、片隅にはオリハルコンが落ちている。
グランドキャニオンには、河水が何万年もの間に彫った造形物が、あちこち残されている。
雨の少ない土地なので、ちょっとくらいアンバランスな形でも倒壊せずにいられるのだ。
記念写真の背景にぴったりなのはもちろん、休憩時の日除けにも利用できる。
たまに中にガラガラヘビが隠れているので、永久に休憩できる場合もある。
ルクソール神殿のオベリスクみたいな奇岩。
オベリスク同様、基部には、心無い来訪者の落書きがみっしり刻まれている。
落書きしまくっているうちに岩が削れて、そのうちポキっと折れないだろうか。
振動を与えぬよう、忍び足で通過する。
滝の高巻きルートは、モコモコした岩窟に溝を掘って造られている。鎖や梯子の整備も行き届いており、ちょっと滑りやすいものの、それほど恐怖は感じない。珍しい景色を目の前にした好奇心のほうが勝つ。
思い思いのポーズで、奇岩窟とたわむれる自分を満喫しよう。
浦安の大ネズミを彷彿とするサボテン。
「やあ、僕の独裁国家にようこそ!」 (甲高い声で)
入場料無料のグランドキャニオンにいるはずなのに、財布の中が心配になる。
実はグランドキャニオンには、エンジン付きゴムボートで訪ねるツアーというのがあって、金さえあれば、過酷な砂漠トレッキング(ガラガラヘビつき)なんかやらなくても、渓谷の最奥部に着けたりする。
夢と快適さは時間で買えるグランドキャニオン。
東京ディズニーリゾートの運営企業であるオリエンタルランド社 (OLC)は、京成電鉄の出資で1960年に設立され、現在も同社が筆頭株主だが (四季報に書いてある) 、このことを京成があまりアピールしないのはなぜだろう。絶好の宣伝材料なのに。
仮にランドとシーは、ウォルトディズニーとの契約上、名前を出せないとしても、独力で立ち上げたイクスピアリは、しがらみなく名前を使えそうなのに。
OLCはOLCで、Webサイトの「会社概要」に、京成のケの字も書いておらず、筆頭株主へのリスペクトがぜんぜん感じられない。
日経で特集されていた「関東・路線別人気ランキング」でも、京成は辛酸を舐めていた。
いまひとつ理由がピンとこない。
あの緻密な駅間隔と運行間隔、人身事故からの回復速度に、非難される謂われはなさそうなのに。
京成が日本に存在しなければ、夢と魔法の王国も日本に存在しなかったのだから、言わばディズニーの恩人である。 関東人は、恩を仇で返すにも程がある。
TDRが、京成の資本力で運営されている事実、着ぐるみの中の人を大量に雇える企業体力は、みんなが切符や定期を買うお金が基盤になっていることを、認識すべきと思う。
滝とサボテンとガラガラヘビで変なテンションになれるハバスパイ。ぜひ、訪問してみて下さい。
水着と水中メガネが必携です。
途中の村のはずれにキャンプサイトがあって、持参したテントを張れます (事前予約は不要・有料)。水場つきで、自炊も簡単です。
ハバスパイのネイティブ・インディアンは、古来から禁酒の掟を守ってきており、飲酒および酒の持ち込みは、ネバダ州の法律で禁止されています。リスペクトを払うようにして下さい。
下山後、ラスベガスのバーで飲む5日ぶりのビールは、気絶するくらいうまいです。